神戸地方裁判所 平成3年(わ)838号 判決 1992年12月15日
本籍
兵庫県尼崎市立花町二丁目一三番
住所
同市立花町二丁目一三番二九号
会社員
辻本隆之
昭和二九年五月三一日生
右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官田村範博出席の上審理し、次の通り判決する。
主文
被告人を懲役一年二月及び罰金六〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、辻本桂の長男で同人が平成二年二月一日に死亡したことにより同人の財産を実妹下川栄子と共に共同相続したものであるが、自己の相続財産にかかる相続税については納付義務者として、右下川栄子の相続財産にかかる相続税については同人の代理人として、相続税の申告をするにあたり、相続税を免れもしくは免れさせようと企て、被告人の実際の相続財産の課税価格が五億三、八一六万二、六七二円で、これに対する相続税額は二億八、五八四万三、七〇〇円であり、右下川栄子の実際の相続財産の課税価格は五億二、五四九万二、六二二円で、これに対する相続税額は二億七、九一一万四、〇〇〇円であるにもかかわらず、無記名の割引債権及び現金等を相続財産から除外した上、同年七月三一日、兵庫県尼崎市西難波町一丁目八番一号所在の所轄尼崎税務署において、同税務署長に対し、被告人の相続財産の課税価格が一億二、〇六一万七、四四八円で、これに対する相続税額は三、〇二七万一、五〇〇円であり、右下川栄子の相続財産の課税価格が一億〇、七六四万二、一二二円で、これに対する相続税額は二、六八四万四、五〇〇円である旨の内容虚偽の相続税の申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人の右相続にかかる正規の相続税額二億八、五八四万三、七〇〇円との差額二億五、五五七万二、二〇〇円を免れ、かつ、右下川栄子をして右相続にかかる正規の相続税額二億七、九一一万四、〇〇〇円との差額二億五、二二六万九、五〇〇円を免れさせたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する平成三年一〇月一九日付け、同年七月一八日付け、同年七月二二日付け、同年八月三日付け、同年八月二七日付け、同年九月二七日付け、同年九月三〇日付け、同年一〇月一九日付け、同年一一月二〇日付け、同年一二月一一日付け作成の各質問てん末書
一 下川栄子の検察官に対する供述調書
一 房川正樹の大蔵事務官に対する質問てん末書(二通)
一 武井昭の大蔵事務官に対する平成三年七月一八日付け作成の質問てん末書
一 塗木敦子の大蔵事務官に対する、平成三年七月一八日付け、同年八月二七日付け(二通)、同年一一月一一日付け作成の各質問てん末書
一 山本馨、亀谷輝男(二通)、今田賢一、山村末信、加賀弘子、楠本秋吉、辻本有理子、加藤登母子(二通)、浜口元次郎、下川栄子(三通)、辻本弘一(三通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の平成三年七月一八日付け、同年九月二五日付け、同年九月一三日付け、同年一〇月四日付け、同年九月二〇日付け、同年一〇月一五日付け、同年九月二八日付け、同年一〇月二九日付け、同年一〇月二五日付け、同三年一〇月一五日付け(記録第一五-一五)、同年一〇月一八日付け、同年九月一三日付けの、各査察官調査書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料
(法令の適用)
被告人の判示所為のうち、被告人分の相続税逋脱行為については相続税法六八条一項、二項に、下川栄子分の相続税について代理人としての逋脱行為については同法七一条一項、六八条一項、二項にそれぞれ該当するところ、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として犯情の重い被告人分の逋脱罪の刑で処断することとし、情状により所定の懲役と罰金を併科し、その所定刑期及び罰金額の範囲内で被告人を懲役一年二月及び罰金六〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については、同法二五条一項により、この裁判の確定した日から三年間刑の執行を猶予することにする。
よって主文の通り判決する。
(裁判官 中川隆司)